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私立学校の労務管理

学校で働く教職員が心身ともに充実してこそ、求められる教育の提供ができるのではないでしょうか。 当事務所では、組織風土を尊重しながら「全体最適」を一緒に目指したいと考えています。

1.公立と私立の違い

一口に「学校」と言っても、小学校から大学まで様々な種類の学校があります。当たり前ですが、対象とする相手が児童なのか、生徒なのか、学生なのかにより、学校に期待されている役割は少しずつ異なりますから、そこで働く教職員の方は、それぞれの対象に応じその専門性を活かしながら、業務に従事されておられます。このように、学校の種類によって業務の内容や勤務実態が異なるということは当然ありますが、基本的にはどの学校で勤務しようと労働者であることには変わりありません。

ところが、学校の労務管理においては、学校の種類よりもその運営母体、つまり国公立(特に公立)なのか私立なのかということが、非常に影響してくるという特徴があります。これは、たとえ同じ教職員(労働者)という立場で、従事する業務内容や目的(学校教育)が同じであっても、運営母体によって労働者に適用される法律が異なり、公務員では認容されていることが、公務員以外では法違反になる可能性があるという、何とも不思議な現象が生じることがその原因です。

もう少し具体的にいうと、私立学校で働く教職員には、いわゆる一般企業と同様にもっぱら『労働基準法』が適用されこととなるのですが、国家公務員にはその適用はなく、また、地方公務員は労働基準法の適用を受けつつも一部適用を除外されており、実際の運用にあたっては地方公務員法や条例などによることになります。

そうすると、例えば「公立○○学校の教員は遅くまで残って仕事をしているのに、なぜ私立△△学校の自分は早く帰るように言われるのか。」、「なぜウチの学校だけ出退勤の時刻を毎日管理する必要があるのか。」というような疑問が生じ、あたかも自分たちだけ一方的に縛られているように感じられるのも無理はありません。現場で働く教職員の方にとっては公立・私立など関係なく同じ業務をしているのですから、「法律がそうなっているから」と言われても、頭では理解したとしても気持ちでは腑に落ちないというのが本音ではないでしょうか。

本当の意味での理解を得るには、一つの学校の中だけの問題ではなく社会全体の問題として考える必要があり、そのための法整備も含め、残念ながらまだ少し時間がかかりそうです。本来、労働者が安全に健康に働ける労働条件や職場環境の確保については、どこで働こうと守られるべき権利であることには変わりないはずですが、適用される法律が異なっているこの現状が、学校における労務管理を特に難しくしていると言えます。

2.残業と給特法

労働基準法では、法定労働時間(週40時間及び1日8時間)を超えて労働させる場合や、法定休日(週1日又は4週4日の休日)に労働させる場合には、業務の内容や生産性のいかんにかかわらず、政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないとしています。

ところが、公立学校教員は、労働時間については労基法が適用されますが、割増賃金については「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)により、私立学校教員とは異なった取扱いがなされています。

要約すると、教師は、授業準備、テスト問題の作成・採点、クラブ活動の指導、家庭訪問などは、すべて「勤務時間の割振り」により法定労働時間内に処理すべきものであり、校長は基本的には残業を行わせてはならないが、特定の業務((1)生徒の実習 (2)学校行事 (3)教職員会議 (4)非常災害等)について、臨時または緊急にやむを得ない必要がある場合に限って残業を命じることができるものであること、そして、労働基準法に定める割増賃金の規定を除外する代わりに、基本給の4%を「教職調整額」として毎月支払うこと、というものになっています。

これは、残業は本来、使用者からの業務命令があって初めて行うものであるという考え方から、『公立学校の校長は、授業準備や作問などについては法定労働時間内に処理できるような勤務体制を取っているから、そもそも残業命令もしていないから残業もないはず。でも、特定の業務や緊急の業務でどうしても時間外に対応してもらわないといけないこともたまにはあるから、それについては、あらかじめ毎月固定でちゃんと払っておきますね~。』ということです。(ホントニ、タリテルノ?)

このように、公立であろうと私立であろうと、およそ業務負担や内容に大きな違いはないと思われるにもかかわらず、労働時間そのものの捉え方が異なるため、私立には私立独自の「労働時間管理」が必要となってくるわけです。

3.働く意識の違い

ケースバイケースですが、学校という組織は階層構造ではなく、どちらかというとフラット構造であるといえます。

例えば、「学年主任」と言われる教員は、「主任」といってもいわゆる一般企業におけるそれとは、若干ニュアンスを異にします。つまり、企業での「主任」というのは、「係長」や「課長」などと同様に、あくまでも職位のひとつですが、学校における「○○主任」は、必ずしも「教頭」「校長」へと進む前段階の職位ということではなく、どちらかというと「職務」の一種類というイメージです。

もちろん、だからといって新規に採用された教員がいきなり「学年主任」を担当することはなく、職務上一定の経験年数が求められることは間違いありませんが、学年主任であった教員が、年度が変わり学年主任でなくなっても、単にその職務(担当)から外れたというだけで、降格でもなんでもありません。校長、教頭や事務長などは、一般的に管理職ですから、組織上の立場としては比較的わかり易いですが、それ以外の教職員の間柄は、実務経験や年齢による差はあったとしても、「上司」「部下」という関係性より、同じ職場で働く「同僚」という方が近いかもしれません。

特に教員については、資格に裏打ちされた仕事に就く限り、いかに新人であってもプロフェッショナルとして、自分の仕事は自分が判断し、最後まで自己の責任において完結するという意識を自他ともに持っているという傾向があります。そしてそれが、「使用者の指揮命令に従い労務提供を行う」という労働者的感覚よりも、それぞれが独立性をもって業務を行っているフリーランス的感覚を強くさせることにつながり、学校はまさにこれらフリーランス労働者の集合体と言えるのではないでしょうか。

このように、いい意味でも悪い意味でも上意下達は通用しないところがあり、労働時間であれ何であれ、とかく管理されることに抵抗を感じる教員もまだまだ多い中での組織統治は、私立学校の労務管理をさらに難しくしている要因といえます。

しかしながら、近年では、過重労働や残業代の問題など学校も例外ではありません。いつまでも教職員の善意のやる気だけに頼っていては、時代とともに目まぐるしく変化する保護者や社会のニーズに対応しきれなくなり、確実に来る少子化の中で自然淘汰されてしまうリスクを、この先ずっと抱え続けることになります。

どんな業種であっても、そこで働く人が『安全に健康で』なければ、やがては誰からも選ばれない組織になってしまいます。長年、ある意味、治外法権であるかのように見過ごされてきた学校という組織の風土改革を進めることは、それなりの覚悟が必要であり相当の苦労を伴うであろうことは容易に想像できますが、学校で働く教職員が心身ともに充実してこそ、求められる教育の提供ができるのではないでしょうか。

当事務所では、組織風土を尊重しながら「全体最適」を一緒に目指したいと考えています。